さんざん話題になっていた、ピース又吉直樹さんの著書「火花」
「著者が現役の芸人、デビュー作で芥川賞受賞」
なんとも話題性たっぷりの作品だったので、
例に漏れず「読んでみたい!」とハードカバーで購入したまま、約2年放置。
もうとっくに文庫化もされて、
二作目の「劇場」も発表されていますよね。
最近なぜか、突然読みたくなりまして、
先日やっと読むことができました。
読み終えた最初の感想ですが、
落ち込んでいる時期、または何かを始めた人、何かを続けているけど芽が出てない人は、読まない方がいいかも。
落ち込んでいるときは読むな!
ってほどのことではないですが、
人によっては気持ちがバッドになる…かもしれません。
特に感情移入しやすい人。
落ち込ませる内容というわけではなく、考えさせられる内容なんですね。
人生観の哲学だと思います。
少なくとも、読んでハッピーにはならないですが、読み物としてとても面白い。
いろいろと言われているようですが、ワタシは「ちゃんと純文学」だと思います。
前知識として知っておくと読みやすくなること
ワタシがまさにそうなのですが、
「芸人・又吉直樹さんが書いた作品」という印象から入っているので、
読んでいる最中に、又吉さん本人のイメージが頭の中に浮かんできてしまいます。
個人的に、話の内容が進めば進むほど、この先入観が邪魔になってきました。
なので、そう言った注意点も含めて
前知識として知っておいた方が読みやすくなる…だろう (多分)
というポイントを3点ご紹介します。
内容は「お笑い芸人」の話
内容としては、売れない芸人さんの話です。
芸人自体に興味がない人でも楽しめる、というか考えさせられる内容になっているので、
苦手な人でも読んで損はないと思います。
ただ、「面白おかしい話」を期待して読まない方がいいかと。
「又吉さんが書いた」ではなく
「一つの作品」として読むほうが面白い
主人公が売れない芸人さんで、性格的にも明るいとは言い難い。
なので、どうしても又吉さん本人とリンクしやすくなってしまいます。
楽しみ方は人それぞれなので難しいところですが、
主人公と又吉さんを重ねない方が読みやすいし、楽しめる。
話が進むにつれて、二人は別人だと改めて感じてくると思います。
しかし、そのまま同一人物的に重なったイメージを引きずって読んでいると、どこかで違和感が出てくるんじゃないかと。
なんとなく腑に落ちないような。
あくまで「純文学の芥川賞」受賞作品
お笑い芸人の話、かつ登場人物が関西弁で話しているので、
一見コミカルで読みやすそうなのですが、
あくまで芥川賞を受賞している作品。
読書が苦手な人だったり、かしこまった表現に慣れていない人は読みづらいかもしれません。
というのも、
ワタシの周りで、読んでみたけど最初の数ページでリタイアした人が結構多かったんですね。
理由は「思ってたより、なんか読みづらい」
読める人はすごいとか、そういった話ではなく
「苦手な人は苦手」なんじゃないかなと思います。
あらすじ
では、ざっくりとどんなストーリーかをご紹介します。
ネタバレはなしで、全体像をホントにざっくり。
読もうか迷っている人でも、さらっと見ていただいて大丈夫。
主人公は売れない芸人「徳永くん」
「スパークス」というお笑いコンビを組んでいる売れない芸人「徳永くん」
物語最初の舞台は熱海の花火会場。
打ち上げまでの余興で漫才の営業を行なっているところから物語は始まります。
手違いで花火が打ち上げられている真っ只中で漫才をすることになったスパークスですが、
みんなの興味は花火に向いているので大惨敗。
芸を披露しても、誰からも必要とされていない状況が徳永くんの心理描写とともに描かれています。
「仇とったるわ」
同じ余興ライブに現れた天才肌芸人「神谷さん」
惨敗によって意気消沈している徳永くんが控え室に戻る際、こちら側に歩いてくる1組のコンビ。
そのコンビは、スパークスの次の出番となるお笑いコンビ「あほんだら」
すれ違う瞬間に
「仇とったるわ」
と、つぶやくあほんだらの一人から、何とも言えない空気を感じた徳永くんはそのコンビの漫才を一部始終見届けることにします。
そして、この「あほんだら」のスタイル、もっと言えば
先ほどつぶやいていた方のスタイルが色々な意味で非常にヤバい。
後に、この人は「神谷さん」という名前で、天才肌ということがわかります。
ライブ終了後、二人で飲みに。「弟子にしてください」
花火大会の余興が終わり、帰り仕度で着替えをしている徳永くんのところへ
先ほど漫才を終えた「あほんだらのヤバい方」が飲みに行こうと声をかけてきます。
居酒屋に到着し、まずは自己紹介。
ここで「神谷さん」という名前がわかったのですが、話題は名前の話からコンビ名の話へ。
神谷さんは会話しているように見せて、しっかり話を “フってきます”
ボケるか、上手い返しをしなければならない状況ですが、全く面白い返答ができない徳永くん。
それでも神谷さんは説教なのかボケなのかわからないニュアンスで会話を続けます。
二人ともだいぶ酔いが回ってきた頃、
徳永くんが神谷さんへ、ふざけてではなく真剣に
「弟子にしてください」
神谷さんは一言。
「いいよ」
師弟関係となって行動をともにする二人の物語
晴れて師弟関係が結ばれたかと思っていると、神谷さんから一つ条件が提示されます。
「俺のことを忘れずに覚えておいて欲しい」
その具体案として、
「お前は記憶力が悪いだろうから、俺の言動を書き残して「伝記」を作って欲しい」とのこと。
俗にいう「死亡フラグ」のような気配を感じますが、
よくある「僕はこのとき、嫌な予感がしていた」的な流れにはならず、
徳永くんは至って普通に「もう死ぬんですか?」と聞き返すのである意味安心させてくれます。
ここから舞台を東京へ移し、
師匠・神谷さんと弟子・徳永くん
二人が行動をともにする物語の本筋へと進んでいきます。
徳永くんの目線から、神谷さんはどう映るのか、徳永くんの気持ちと行動がどう変わっていくのかを時間の経過と一緒に楽しんでいくストーリーになっています。
感想とレビュー
破天荒、天才肌の神谷さんへの憧れ
行動をともにする中で、
神谷さんはとにかく破天荒、笑いに実直で自分の哲学をしっかり持っている人ということがわかります。
対して徳永くんは慎重派。
自分にない魅力を持っている神谷さんに認められたい、少しでも近づきたいと考えて行動していく姿が心理描写とともに描かれているのですが、
ほとんどの人が徳永くん寄りに感情移入するんじゃないかなと思います。
天才と凡才の感覚値の違いであったり、自分にはない才能への憧れや葛藤、
もう一周して「アンタみたいには出来ないよ!」って逆ギレしたくなる気持ちとか。
徳永くんの心理が妙にリアルに描かれているので、痛々しいというか、生々しい感覚。
読んでいるとたまにお腹のあたりがギューっとすることがあるかもしれません。
落ち込んでいる時期には読まない方がいい…かも
二人の考え方の違いや、生き方の違い、表現方法の違いが「お笑い」というテーマで描かれているのですが、
お笑いに限らず、努力や才能、仕事や社会との接し方など、自分の在り方を考えさせられます。
全然ネガティブな物語ではないのですが、
リアルな心理描写なので、やたら生々しく、読んでいる最中も読み終わったあとも「自分だったら…」って考えちゃうんですね。
もちろん人によりますが落ち込んでいる時期とか、なかなか芽が出ないなぁって感じている時に読むと一層考え込んじゃうかもしれません。
少なくとも明るい気持ちにはならないんじゃないかなと。
徳永くんが最終的に出す答えもぜひ注目してほしい。
まとめ
記事を自分で読み返してみても
「読まない方がいいよ、おすすめしないよ」ってレビューしているみたい…。
そんなことはないですよ!
あくまで、落ち込んでいる時期は読まない方がいいかもよってことが言いたかったんです。本当に。
むしろぜひ読んでほしいくらい。
他のレビューを見ていたらワタシと全然違う感想を持っている人もいっぱいいましたからね!
まだ読んでいない人へ、ちょっとした参考になったら嬉しいなと思います。
気になっていたけどまだ読んでいないのであれば、ぜひ “落ち込んでいない時期” に読んでみてください!