「TBS赤坂ACTシアターで歌舞伎をやっているらしい」という情報を聞きまして、
ほとんど歌舞伎なんて見た事がないのですが、何事も経験だと思い先日「夢幻恋双紙 赤目の転生」という演目を見に行ってきました。
歌舞伎は学生の頃に一度見た事があったはず。しかし全く記憶にない…
多分、面白くなかったか興味がなかったんでしょうね。
伝統芸能って初心者はどこから入れば楽しめるのかさっぱりわからなかったのですが、今回赤坂でやっている演目は聞いたことがある俳優さん (中村勘九郎さん・中村七之助さん) が主演ということで、多少は楽しめるだろうと踏んでいました。
「…あれ?なにこれ面白い…」
多少どころかかなり面白い!
歌舞伎に関して全くの初心者でもスゴく楽しめる!こんなに見やすいなんて知りませんでした。
食わず嫌いしないで見に行ってよかった!
今回の演目が若い劇作家さん (と言っても40代ですが) の新作だったから見やすかったのかもしれませんが、歌舞伎を一度も見た事がない人はちょっと見に行ってみて!
単純に「歌舞伎って面白い」ってなると思います。
今回は初心者のワタシが楽しめたポイントをお伝えします。
「夢幻恋双紙 赤目の転生」あらすじ
時代設定は江戸時代
気弱で何も取り柄もなさそうな主人公の少年「太郎ちゃん」と、幼馴染の友達3人、
そして最近近所に引っ越してきたベッピンさん「歌ちゃん」とその家族のお話。
ヒロイン歌ちゃんは、重い病を患ったお父さんと、それを知っているのにお酒に入り浸りなかなか家に帰ってこないヤンキー兄さんの3人家族。しかもお父さんの借金で家計は火の車。
日々状況が悪くなっていく歌ちゃん家族ですが、とうとうお父さんが亡くなってしまいます。
借金は残るわ、ヤンキー兄さんは帰ってきても「お前独りでどうにかしろよ」と言われる絶望的な歌ちゃんでしたが、
歌ちゃんにぞっこんな気弱少年太郎ちゃん、「独りにしない!借金もどうにかする!」と歌ちゃんとの結婚を申し出ます。
美談…じゃなさそう
が、この太郎ちゃん、優しそうに見えて実は真性のダメ野郎でした。
悪い人ではないのですが、仕事が全然続きません。
「お前には向いてない」と言われるとそのまま仕事を辞めてしまう。
「今探してる」とか、「僕は何やってもダメだから仕事なんかないよ」などなど言い訳をして仕事をせずに家でゴロゴロする毎日。
今で言うところ完全にひもニートです。全くもって努力をしません。家計は歌ちゃんの稼ぎでどうにかしています。
2年ほどこんな生活が続き、さすがに歌ちゃんから「尊敬させてよ!!」と言われてしまいます。
しかし太郎ちゃん、そこまで言われてもさほど動揺しないストロングハート。
ですが一応仕事を始めます。
この仕事内容がまずかった…
義理のヤンキー兄さんの“色々なモノを埋める”やばい仕事を手伝い始めます。
そして、お兄さんの手伝いをしているのが歌ちゃんにバレてしまいます。
案の定「普通の仕事をして欲しいだけ!」と歌ちゃんは家出。
「これくらいしか僕にはできないんだよ」と食い下がりますが、歌ちゃんがマジで出て行った事でようやくショックを受けた様子。
そして、次の仕事の日にヤンキー兄さんに切り出します。
「この仕事を辞めたいです」
絶対ヤバそうな雰囲気ですよね。想像通りです。
「…お前は何をやってもダメなんだ」
と、ヤンキー兄さんに斬り殺されてしまいます。
気が付くとそこは
気が付くとそこは過去。結婚する前の少年時代に戻って来ていました。
記憶が若干曖昧ではあるものの「同じことは繰り返さない!」と固く決意。
人格を変えて、前回と同じ短所からなる過ちを繰り返さないよう生き方を変えていきます。
人格が変わった太郎ちゃんの2回目の人生スタートです。
情けない男ではなく、今度は「お金を稼ぐデキる男」として。
しかし…
何度も転生を繰り返す太郎ちゃん。
最後の最後でまさかの展開。「赤目の転生」というタイトルの意味がわかります。
楽しめるポイント
設定がわかりやすい!
最後のネタバレをしない程度にあらすじを紹介しましたが、
今回の設定は「転生の物語」でもあります。
ちょっと内容は違いますが「時をかける少女」のように過去に戻りやり直しできるということ。
こういった話が好きな人は、結構前半で結末がわかるかもしれませんが、例に違わずちゃんと伏線が張ってあるので後半に進むにつれ一層面白くなっていきます。
最近だと「僕だけがいない街」「君の名は。」などでも近い表現があるので、若い世代でも楽しめる内容。
古典的な話だと多少は背景を知らないとわからないかもしれませんが、前知識がなくてもわかりやすく見られるように出来ています。
また、ピアノのBGMだったり切り絵調のセットを使う演出が古臭い感じがしなくて良かったんだと思います。
“現代版歌舞伎”って感じです。
パロディまで出てくる!
登場人物についてちょっと説明します。
取り柄のない気弱な少年「太郎」、ニックネームは「のび郎」です。
そして、幼馴染の友達3人。
それぞれ「剛太・末吉・静ちゃん」となっています。
※漢字は合っているかわかりませんけど…
そして剛太は物語の途中でのび郎に
「心の友よ!」と叫ぶシーンが。
完全にドラえもんです。TBSなのに。
これも、どの世代でも楽しめるポイントだと思います。衣装の色と性格もなんとなく近い感じがするんですよ。静ちゃんだけは100%別人でしたけど。
静ちゃんに対して「時代は変わる」「静ちゃんの時代は終わった」なんて台詞もあります。
現代語で話してくれる!
基本的に現代語で話してくれます。
語尾は江戸っ子っぽい話し方をしていますが、意味がわからないような事は一切なく、ちゃんと話を理解できるので困る事はありません。
「ムカつく」とか普通に言います。江戸時代から使われていたのかは知りませんけど。
現代語は現代語なのですが、しっかりキャラクターに合った話し方をしてくれるのでやりすぎてシラケる事もありません。
男っぽいキャラクターは「テメェ」って言いますし、三枚目キャラクターは「オイラ」って一人称だったりします。
この表現があっているかわかりませんが、しっかり歌舞伎なんだと思います。
最初から楽しむために注目したいポイントは…
「設定がわかりやすい!」というところでも触れましたが、勘がいい人や、転生物が好きな人は前半で結末の想像ができるかもしれません。
しかし、そんな人でもそうでなくても楽しむために注目したいポイントをお届けします。
それは、各キャラクターのセリフを注意深く聞いておく事。
転生物なので、いたるところに伏線が張ってあります。
その中で、前半からあるキャラクターが結末を匂わせる重要なセリフをさらっと言うんですね。
また、中盤でも別のキャラクターがとても重要なセリフを言います。
一見聞き流してしまう、というか何の違和感もないセリフ。
もしかしたら見終わった人でも覚えてないかもしれません。
ですが、よーく注目すると、「あれ?何でこの人こんなセリフを…?」という事があります。
この所々で出てくるセリフを意識できるかどうかで、物語を1.5倍くらい楽しめると思います。
もっと言えばもう一回見て、真意を確かめたくなるかも。
ネタバレしないようにかなり抽象的に書きましたが、ぜひ各キャラクターのセリフを注意深く意識して見てください!
男は誰にでも当てはまる…かも。
少しだけネタバレをします。
ので、見たくない人は飛ばしてください。
主人公の太郎ちゃん、実は数回転生を繰り返します。
そして、「前回の失敗を繰り返さない」ために毎回違う人格になるのですが、
どの人格も基本は「歌を幸せにする!」と言う根底があります。
その根底があるのですが、幸せにする方法が空回りして
要所要所の言動に「あるある」な事が起きるんですね。
例えば、最初の太郎ちゃんは気弱なのでピンチの時は笑って誤魔化したり、逃げ腰だったりするんですね。夫婦生活では「お金より”好き”って気持ち」に重きを置いていたり。
他の人格でも、多分男なら誰にでも当てはまる「あるある」がどこかにあると思います。
そんなところをリアルに表現しているので、妙に感情移入してしまう面白さがあるんです。
まとめ
なかなかきっかけがなくて触れていなかった”歌舞伎”ですが、
いざ見てみるとスゴく面白い!というか見やすいじゃん!というのが正直な感想で、今回は現代的なものでしたが他にも有名な演目など見てみたくなります。
「なるほど、これだけ面白ければ伝統にもなってファンも多いよね」なんて初心者ながら思いましたので、見た事がない人はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
「夢幻恋双紙 赤目の転生」は本当に面白いのでオススメ。
4月25日 (火) までやっているみたいです。映像化して販売になったら嬉しいなぁ。
赤坂大歌舞伎:http://www.tbs.co.jp/act/event/ookabuki/
TBS赤坂ACTシアター:http://www.tbs.co.jp/act/